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夏の風物詩―香雲紗
 「いや、暑いですね!」という挨拶が定番になっている広州の夏――。

 この暑さをいかにしのぐか。地元の人々は昔から代々工夫して、生活の知恵を積み重ねてきた。例えば、飲食面での摂生や、竹のシーツを敷いて寝る、綿やシルクで作った服を着る、などなど…。

 ということで、夏服ならやはりシルク。シルクは中国各地で取れる。特に蘇(州)杭(州)辺りはシルクの産地として名高い。が、広東省順徳でしか作れないシルクがある。それは「香雲紗」という種類だ。軽く、柔らかく、肌触りがよく、着ると涼しくて気持ちがいい。伝統の夏服の生地だ。
 でも、実はこの香雲紗、値段が高いので、昔はお金持ちしか持てなかった。私の記憶では、小さい時見た映画に出てくる地主や“地主婆”などの特権階級しかそんな服を着なかった。このため、つい最近まで、お年寄りや専門業者以外の人は(私も含めて)、香雲紗は見たこともなかった。
 私がこの香雲紗を知ったのは2、3年前、あの中国全土でヒットした章詒和著『往事並不如煙』を読んだときだ。この物語の中で、当時の有名人である史良女史が香雲紗服を優雅に着ていた描写は印象深く、憧れを持つようになった。その後、香雲紗にめぐり合い、今ではもちろん自分も着ているようになり、そして、多くの人にこの広東独特な生地の物語と良さを知ってもらいたい、と思うようになった。

 香雲紗の原材料は天然素材を採用、さらに製造過程も複雑で全部手作りという。不思議なことに順徳を離れたら、同じ作り方でもいい物を作れないそうだ。

 作り方を調べてみた。①上等な蚕の糸で生地を織る②広東独特な植物:薯莨の汁で数回も浸透したり煮込んだりして濃く色染める③干す④「過河泥」:明け方、日が出る前、川で取ってきた泥を攪拌して均等に色染めた生地の片面に塗付ける⑤芝生に広げて、薯莨の汁と泥を十分に接触させ、化学反応を起こらせる。(注:片面しか塗らないので、出来た製品は両面の色が違う)そして、猛烈な太陽に当てる⑥洗浄⑦干す――など複雑な工程を経て出来上がる。
 「過河泥」以外の作業は、全部太陽の光に頼るので、1年間のうち5ヶ月しか作業できないようだ。

 この材料で作った服は、一枚一枚生命力があるように感じる。洗濯は手で洗わないとだめで、洗剤もソフトなものでないと痛む、繊細そのものだ。

 順徳の職人さん、この素敵な香雲紗を代々伝承していくように頑張ってほしい。

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