広州人物図鑑
- 「もう美容師だけじゃないんだ!」
広州で貴重な日本人美容師として活躍されている西村明剛さん。今年はご自身のお店をオープンされ、活動の幅を広げています。広州にいらした経緯から今後の夢まで、色々お話をお伺いしました。
――なぜ中国・広州に来たのですか?
西村さん(以下、西村) 広州に来たのは、2017年6月9日、36歳の時です。
中国に来た理由はあるお客様からの一言からです。
このお客様とは、いつもは、髪の毛を切りながら、世間話しかしませんでした。しかし、広州に来るちょうど半年前のある日、私がいつものようにヘアカットをしていたら、彼女が突然、「環境を変えてみてはどうですか?」と言ったのです。私は驚いて「どうしたんですか??らしくない話を急に」と言ったことを、今でも覚えてます。
彼女が言った「環境を変えてみたら」の行き先は「東京」でしたけどね。当時、私は全国大手チェーンのヘアサロンの京都店で、美容師として、サロンワークや教育、講師活動をしていました。そのお客様は、「京都での勤務が終わる頃に一緒に東京に行きませんか?そうすれば、私の髪は困らないわ」と言うのです。なぜなら、彼女は、4月から東京での暮らしになるのでした。
もともと、私が働かして頂いていた会社は東京が本社で全国展開してるサロンだったので、「西村さんも東京の店舗に移動すればいいじゃない? 日本で一番お洒落な場所で活動するのもあなたの為になるから」と言っておられました。
でも私はすでに会社からの東京の店舗のお誘いを断ってましたので、行けなかったのです。そして、正直な気持ち、東京に魅力を感じませんでした。
その事を彼女に伝えたら、
「でもこの京都での店だけであなたの美容師としての人生を終わらせるのは、もったいないから、あなたの成長の為に環境を変えることをしてほしい」と言われました。
「だから、本気で考えてほしい!!」
お客様にこう熱く語られたことをきっかけに、そこから、いろんな美容師や人に色々話を聞いたりしてました。そんな中に海外で活躍する方達の話があったんですね。
そこで、海外で美容師として働くことに興味を持ち始め、半年後、広州に来ることになったのです。
なので、あの時あのお客様の一言が、僕の今のきっかけです。
――なぜ美容師になったのですか?
西村 今の仕事を始めたのは、26歳の時です。前職は土木工事をやってました。4トントラックとか運転して、楽しかったな。
その仕事ができなくなり仕事を探してた時に、セブンイレブンにあった「とらばーゆ」という求人情報誌で見たヘアサロンの求人情報が美容師との出会いです。
だから、「とらばーゆ」が私を美容師にしてくれました。
――美容師というお仕事のやりがいは?
西村 魅力とやりがいと楽しさに関しては、どうでしょうか…あまり感じたことなかったですね。給料安いし、拘束時間長いし、作業細かいし、見習いからスタートして今もそうなんですが、難しいんですよ!!髪の毛切ったり、染めたり、パーマしたり、メイクしたり、人の前で教えたりするの難しくて…悩んでやって、また悩んでやって、の繰り返しで、気づいたら今ですね。
難し過ぎて辞められなかった。自分には才能、センス、無いの分かっていたけど…。数えきれない位バカにされてきたから、悔しかったんですかね。(笑)
でも有難い事は、沢山あったな。
日本の美容業界で一番の社長の元で働けたり、メッチャ有名な美容師にセンスいいね、って言われたり…色んな人とこの仕事で、出会えて、今は中国で活動している。
「とらばーゆ」がスタートですよ。リクルートさんにありがとう言いたいです。
中国でもこの仕事でいい出会いもありました。実は私恥ずかしながら39歳で初婚でして、今年の8月27日に結婚できたんです。
それも、リクルートさんのおかげですよ。(笑)
中国人の女性と結婚したのですが、私の中では、結婚は奇跡に凄く近いですね。
妻との出会いもそうですが、今年は色々ありまして、前の店をやめざるを得なくなってしまったんです。妻にも凄い心配をかけてしまって、自身も落ち込んでしまって、今後どうしようと思ってた時もこの仕事で出会った人が私の心の支えになってくれました。
企業家の森さんという方が私を支援してくれたんですよ。妻と一緒にお忙しい中。
本当にありがとうって…。その時その場所に居てくれる、その価値といいますか、タイミングといいますか、掛け替えないですよ。一生忘れない光景ですね。
その後 森さんの御協力もあり、中国で自身の会社と店(広州明剛形象設計有限公司)を立ち上げることになりました。
なので今年は 色々ありました。
「コロナ→失業→結婚→会社設立」と、今のところ良いことと悪いことが2対2なのでもう一つ何かしたいです。今年中に!!
――今後の夢は?
西村 今後は、店舗を増やしてみたいです。海外でも中国でもいいのですが。企業家森さんが凄くて、いい背中見せてくれるんです。また辞められないですね。
美容師として「難しいからやって、悩んで、またやって悩んで」が、今度はまたまた企業家としてスタートしたから。
このインタビューに答えていて気づいたんです。「もう美容師だけじゃないんだ!」と…こんな感じです。