広州人物図鑑
・古川智子 ——「やってみよう」と思ったことは恐れずやってみる
相手の文化を尊重し、自分の考えも理解してもらうことが大切
大連、台北での語学留学の経験を活かし、広州の日本人向け不動産会社「アパマンショップ」に勤めていた古川智子さん。アパマンショップで1年半の月日が経ったある日、知り合いの誘いで中国人向けの日立エレベーターのCMに出演。それをきっかけにアパマンショップを退社、俳優の路へ進むことになった。映画「長津湖 水門橋」などへの出演、中国人男性と結婚、そして出産と子育てを通じて、日本と中国の文化の違いを感じつつ、その違いを人生の楽しみに変えている。「俳優と母親」、2足のわらじで活躍する古川さんに「海外生活を楽しむコツ」をお伺いしました。
中国に興味を持つきっかけは何ですか?
高校時代の選択科目で「中国語」を選び、全ての科目の中で一番成績が良かったので「中国」へ興味を持つことになりました。また中国語の表現が好きであったことも、中国に興味をいだかせる後押しになったと思います。そして高校3年生の時、大連に短期留学できるチャンスがあったので、留学することをすぐに決定。友だちからは「なんで中国なんかに行くの?」と不思議に思われましたが、実際行ってみると日本で伝えられている中国の現状とは違っていて、とても居心地が良く、楽しい時間が過ごせ、中国ファンになっちゃいました。
高校生で中国ファンになったのですが、大学ではアパレル科を専攻、卒業後は日本のアパレル系企業に就職し、中国と触れ合う機会が減りました。ただ就職して4年が経った2017年、会社が倒産したことをきっかけに「中国語を学びたい」という気持ちが再燃焼、台湾へ留学することに…。そして台湾で1年半、語学留学をし、中国語のスキルを磨いて、2019年、広州の「アパマンショップ 天河店」に就職することになりました。
留学時代で楽しかった想い出はありますか?
台湾留学中、現地や外国人の友だちをたくさん作り、色々な交流会に参加していたのはかけがえのない楽しかった体験です。この体験があったからこそ、色々な国の人々の文化や考え方を知ることができました。また台湾留学中はお金がなかったので、コスパの良い夜市に出かけ、ご飯を食べていましたね。ただ最初は水が合わなかったようで、しょっちゅうお腹を壊していましたwww。
「アパマンショップ」で働き、身につけたスキルはありますか?
新規営業で何もない工場地帯へ1人で飛び込んでみたり、日本人顧客が減ったコロナ禍で営業を行ったりなど、厳しい条件での営業活動を行った結果、「どのような状況でも動じない鋼の度胸」を身に付けることができましたwww。また、営業が上手くいかなった時、既存客の満足度を上げるため、様々なアフターサービスプランを計画するなどをして「人に喜ばれるために何をすべきか考えるスキル」も日本にいた時より向上したと自負しています。
俳優業をすることで変化したことはありますか?
アパマンショップで働いていた時と違い、日本の文化に興味を持つ中国人との交流が増えたことが大きな変化です。撮影中、中国人の映画関係者より「このような時、日本人はどうするの?」や「このような時、日本人ならどう考えるの?」など、日本人の振る舞いや考え方を尋ねられる機会が多く、初めはしっかりと回答することができませんでした。ですので、俳優業を続けていると自然と「日本人とはどのような文化を持っているのか?」と考えることが増え、日本人としての自分自身を見つめ直す機会が多くなりましたね。そしてオンラインで日本舞踊を学ぶなどをし、日本文化の造詣を深め「自分が生まれ育った日本」を伝えることが楽しくなってきました。
外国人と上手に交流するコツってありますか?
特別なコツはありませんが、これまで多くの外国人と出会い、交流する中でわかったことは「外国人と交流する時、大切なのは謙虚さ。相手の考え方や文化を尊重することを忘れてはいけない」ということですね。みなさん、これまで中国で生活していて、色々な場面で日本と文化や考え方が違い、戸惑うことがたくさんあったかと思います(私もそうでしたwww)。その時「日本はこうしているから、この国の人はおかしい」と言ったり、そのような気持ちを態度にしてしまうと、相手の立場を否定することになって、コミュニケーションが取りにくくなるでしょう。ですので、まず相手のことを考え「なぜこのような違いが生じるのか?」を客観的に判断し、認めるところは認め、改善してもらえるところは改善してもらうようにお願いすることが大切だと思います。このようにマインドを変えていくと、接する人々が自分自身のことを理解してくれ、コミュニケーションを取ることが楽しくなりますよ。
昨年、私は女の子を出産し、現在、夫のお父さんとお母さんと共同で暮らしています。初めは文化や考え方の違いで衝突することもあり、言いたいことも言えず、我慢する日々が続いていました。ですが「このままではおかしくなってしまう」と感じ、「双方の文化を理解し、譲れない気持ちは伝える」とマインドを切り替えることで、現在は問題なく生活を送ることができています。
海外生活を楽しむために大切なことは何だと思いますか?
「何でもいいので楽しいことを見つけ、恐れずやってみる」ということですかね。海外生活は日本と違い、不便なことがたくさんありますが、逆に楽しいこともあります。
料理研究家の土井義晴さん著書「一汁一菜でよいという提案」の最初に書かれていた「いちばん大切なのは一生懸命、生活すること。一生懸命したことは、いちばん純粋なことであり、純粋であることは、もっとも美しく、尊いことです」という言葉が私は好きで、海外で生活する私たちにとって大切な言葉だと思います。そして、一生懸命に生活するのに必要なのは「日々の生活を楽しく生きる」ということではないでしょうか?
楽しいことを見つけるためには自分で前に一歩出ないといけません。ですので、せっかく中国で生活しているのですから、少しポジティブに生活することを私はオススメします。どのようなことでもいいので、恐れずやってみましょう♪