連載第6回 （2006.10掲載）
＜データ＞
住所：天河区体育東路華陽街55号-79号怡苑内
電話：020-3880-5826
営業時間： 11：00 ～ 23：00
住所：増城市新塘鎮広園東路北段碧桂園鳳凰城
電話：020-8280-7619
金利来ビル東側の通り、ちょうど金利来ビル横を一本入った小さな通りにある居酒屋「立村」。神戸の長田ご出身、深センであてたというパンチパーマとめがね にお髭が、ちょっぴりお茶目な風貌、好きな歌手は松山千春、殴られても泣かないが悔しいときには悔し涙が出るという中村店長にインタビューしました。
中国にお越しになったきっかけは ?
日 本で福建省とつきあいがあるビジネスをしていた時、その関係のサークルである会社の会長さんと知合い、意気投合したんです。会長さん曰く『中国に 数多くの 支店があって、多額の利益を出している中で、 唯一福建省だけ回収率が低くて困っている。誰 かやってくれる人を探しているんやけれど、 あんたやってくれへんか。』と頼まれたのがきっかけでした。さっそく事務所を出したもののうまく行かず、自己資金をすべて摩ってしもうたんです。普通なら 黙ってすごすごと帰国するんやろうけど、中国で失った お金は中国で取り返したろうと決心し、その会社の広州支店に連絡しました。
ＨＰＷＧ：
それで広州にいらしたのですね。
中村店長：
2001年3月16日でしたね。その会社の面接を受けたんですが、条件が折合わずに断念。上海行きの飛行機の切符を買ったんですが、結局は飛行機には乗ら ず。自分の性格が許さへんかったんですね。ここで旗揚げたるんやと。とはいえ、当時は言葉もろくにわからずタクシーにものれへん、そうこうするうちに最後 の１万円札を両替し手持ちのお金も尽きてきて、 これで俺の人生も 終わりかなあ ・・・と（笑）。 死ぬのなら 最後に日本料理を食べてから、と思って泊まっていたホテルのすぐ隣にあった日本料理屋でご飯と味噌汁、秋刀魚を食べていたところ、そのお店のウェイトレス から『どうしてあなたはそんなに悲しい背中しているんですか』と 日本語で声をかけてもらいました。 あとからその方が 広西省出身の李さんというお名前だということを知ったんですが、彼女がおらへんかったら今の私は存在してなかったでしょうね。結局彼女がいろいろお世話し てくれて、ある日本料理屋に勤めることができるようになりました。実は若い頃に10年ほど 包丁を握った事があったんです。最初の月給は４００元。お店の台所で寝止まりしていました。それから深センのお店に移りようやく月給の桁が４つになりまし た。（笑）今思えば あれが下積生活やったんでしょうか。その後 しばらく経ったある日、ここが売りに出されているのを知りました。
ＨＰＷＧ：
今の立村ですね。
中村店長：
はい。開店は 2004 年 3 月 31 日。
ＨＰＷＧ：
最初から今のようになかなか予約がとれない盛況ぶりだったのですか?
中村店長：
いやいや。初日売上げはゼロ。 2日めが400元。最初のお得意様は伊藤忠商事の4名様でした。当時は体重が70kgまで落ちました。
ＨＰＷＧ：
今は ?
中村店長：
95kg ！( 一同： 笑い )
ＨＰＷＧ：
これはいける、と手ごたえを感じたのはいつ頃ですか ?
中村店長：
今もありません。毎日が勝負です。
ＨＰＷＧ：
おいしさの秘訣はどこにあるのですか ?
中村店長：
当店ではざるそばや野菜ひとつ洗うのにも水道水を使っていません。1日18 リットル瓶で20本の蒸留水を消費しています。是非当店の生野菜 を使ったサラダを食べて頂きたいです。違いが判っていただけると思いますよ 。
ＨＰＷＧ：
お寿司を握っていらっしゃる方が以前の総理大臣に出してらしたと聞いてますが。
中村店長：
パーティーで小泉首相に出していました。増城店に行けば食べられますよ。
ＨＰＷＧ：
従業員の方にはどのように接していらっしゃいますか ?
中村店長：
来店されるお客様が、家で食べればいいものをわざわざ外で食事されるのには理由があって、 ひとつはストレス発散のためだったりすると思うんです。そういうお客様が癒されるような接客をするよう従業員に指導しています。『立村に来れば元気になれ る。』また、当店では財布や携帯電話をお忘れになっても従業員が必ずフロントにて保管しますから紛失するということはありません。伝票が1枚でも無くなら ないよう管理を徹底しています。能力が劣ると思っている従業員でも必ず 1つは長所があります。そこを見つけて責任を以って仕事をさせれば彼らはどんなに時間がかかっても最後まできちんとやり遂げます。お互いの信頼関係がこう やって成り立つわけです。 ところでうちの 従業員には広西省出身者 が多いんですが、広西省って秘書をたくさん輩出しているってご存知ですか ? 彼らには今日明日の給料ではなくて、将来を見据えて仕事に取組むよう言い聞かせて 、そして、どの従業員にも店長になれるチャンスを与えるようにできればと思っています。
ＨＰＷＧ：
中国語はどのように勉強されたのですか ?
中村店長：
中国語はこちらに来てからですから、最初は例えば玉葱を指差して、これは何かと聞いて、 1 つ 1 つ。その後はもっぱら DVD で字幕を見ながら覚えていきました。
ＨＰＷＧ：
最後に将来の展望をお聞かせ下さい。
中村店長：
いろいろすったもんだありましたが、人間、どん底の生活を知っていれば怖くないもんです。私は本当にお客様と従業員に恵まれました。広州は日本人も中国人 もみな本当に温かいですね。これからも私を支えてくれる人たちと一緒に成長し、中国という国が私を必要としなくなるまで、頑張っていきたいと思います。
ＨＰＷＧ：
今日はありがとうございました。
今 回は、とろけるようなねぎチャーシュー、さっぱり新鮮なほうれん草のベーコンサラダ、温泉卵ソーメン、キハダマグロの刺身、江戸前寿司とおでん、それか ら、中村さんのお知り合いの方が作られていて、芋そのものから手作り で造られている という鹿児島焼酎 「蔵の師魂」を頂きながら、お話を伺いました。『どうか自分ではなく 従業員の写真を掲載してほしい。』との中村さんから要請があり、立村玄関前で記念撮影しました。最後まで従業員思い、そしてちょっとシャイで ハートの熱い中村店長でした。
