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月餅の思い出

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農暦八月十五日(今年は10月6日)、中国伝統の中秋節だ。この日のお月様が1年中で一番丸いといわれる。団圓節(一家団欒の日)ともいい、普段離れ離れの家族が集まり、団欒を楽しむ、中国人にとっては春節の次に大事な日だ。

小さい時、「中秋節は丸いものを食べるのよ」と母が言った記憶がある。客家の習慣かもしれないが、確かにお月見の時いろんな「丸 い」ものを食べていた。月餅、柚子、(煮込んだ)里芋、(炒めた)田螺、丸い杯でお茶を・・・そして丸い紙提灯をぶら提げて遊んで――、毎年待ちに待つ楽 しい行事の一つだった。

だが、大人になってからは、なぜかだんだん中秋節が、月餅を人にあげたり、もらったりする行事になってしまったような気がする。

中国人の世界で中秋節に欠かせない伝統のお菓子:月餅。もともと月を祭る際に奉げるお菓子だといわれた。広(東)式、(北)京式、蘇(州)式、 dian(雲南)式などいろいろ流派があるなかで、広式は一番評判が高いらしい。中身は蓮の実が最もポピュラー、さらにそのなかに塩漬けの卵黄が入ってい る。卵黄は満月に見立てられているそうだ。最近では雪見大福のような表皮をしているきれいな「氷皮月餅」もある。
ボリュームたっぷりのこの月餅、油が多く糖分も高く、2、3口食べると、もう満腹になってしまうかもしれない。しかしそれを食べないと、中秋節の実感が湧いてこないという不思議なお菓子。
今時の月餅は、特に都会では、残念ながら本来持っている意味が薄くなりつつあり、「お付き合いのツール」になってしまったと思う。確かに造る技術も形も味も以前よりは進歩し、選択肢がかなり多くなったが、昔のような楽しい雰囲気はもう味わえない・・・。

昔、詩人たちは「満月」や「三日月」など月にたとえて人間の悲観離合を比喩していた。故郷を離れている人々は月にさまざまな感情を託していた。仮に中秋 節に家に帰れなくても、その日の夜に同じお月様を眺めながら、同じ月餅を食べて、寂しさと暖かさが混じる複雑な気持になっていたかもしれない。

一家団欒、この幸せを託しているお菓子、月餅。
皆様、せっかく広式月餅の産地に暮らしているのだから、中秋節には一口でも月餅を楽しくお召し上がれ。幸せ(一家団欒)のために。

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